環境適合性に優れるNi-MH電池には、携帯用機器、電動工具等に加え、現在、電気自動車、ハイブリッド自動車等の駆動源という新たなニーズが生れている。本電池の負極材料には主に希土類系AB_5型合金が利用されており、合金負極の電気化学容量はその水素吸蔵能から約380Ah/kgが最大となる。しかし新たな利用分野では、十分な一充電走行距離確保のための高い容量、そして熱帯や寒冷地域という厳しい環境下での優れた作動安定性といった、より高い機能の発現が合金材料に求められている。本研究は、希土類系合金の約2.5倍の高容量が期待できるMg-Ni系合金の高機能化に関する研究である。 本合金系は、Mgの強い電気陰性度により吸蔵水素の脱水素化が困難で、またアルカリ電解液を使用するNi-MH電池系内ではMg(OH)_2の生成が進行し失活していく。本研究は、Mg_2Ni水素化物のイオン結合性緩和を意図したグラファイトとの複合化過程で得られたMgNi_3Cの脱水素化特性改善の効果、すなわちMg_2Ni相と本相とのミクロ混相化効果に着眼し進められた。 先ず融解法では合成困難な改質剤MgNi_3Cが、共晶合金MgNi_3とグラファイトのメカニカルアロイングにより合成可能であることを確認した。また、グラファイト量を変化させることで、多数の空孔を含む非化学量論組成のMgNi_3C_x(X≦1)の合成も可能であることを確認した。遊星ボールミルによって作成された改質剤MgNi_3C_x(X=1)とのミクロ混相体は、吸蔵水素の酸化電位がカソード方向へシフト(関数発生器によって自動制御された電気化学計測により確認)し、脱水素化特性が改善されていた。また、非化学量論組成MgNi_3C_x(X<1)では、脱水素化過程での混相体中の水素移動パスとして、本改質相中の空孔が有効に機能することを示唆する新たな知見を得た。
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