研究概要 |
本研究は水素化物をつくる合金において、水素化物を転位の固着源として作用させ強加工により多量のひずみエネルギーを導入し、再結晶にて結晶組織微細化を図ろうとするものである。5083Al材を対象とした初年度の具体的研究目的とその達成概要、新たに得られた知見は以下のようである。 1)水素吸蔵条件の把握と水素化物の分布状況と存在位置の同定ならびに解離条件:本材料において十分なMgH_2を生成させるためにはMg材の設定条件より高い773K,0.4MPa.4h,水素ガス中で吸蔵処理する必要があった。水素含有量(昇温法)は107PPMを示し、水素化物の存在、量の相対的比較はX線により計測した。また、存在位置はトリチウムにより調べた結果、粒界で一部存在しているMgの近傍に水素が多量に観察され、反応条件からも水素化物を形成していると断定出来た。また、強加工、再結晶処理後の水素解離条件はDSC測定結果より再結晶温度以下の523K,0.1Pa,30hとした。残留水素量は0.9PPMであり未加工材の予備試験より予想した結果より高めで更なる改善が必要である。しかし、この条件では結晶粒径の成長はほとんど見られなかった。2)加工条件と組織、機械的特性:圧延加工は冷間(室温)で行い、最終圧下率は90%であった。水素吸蔵材、未処理材の同一加工条件下での組織を光顕、TEMで観察した結果、吸蔵材では著しい多重すべり、変形帯を形成しており、内部組織のセル境界での転位の集積の様子も顕著である。平均粒径はEBSPの結果より2.5μmであり、未処理材より1μm程小さくなっていた。また、降伏応力、引張り強さは未処理材のそれに比較して1.2倍,1.3倍に上昇していた。
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