研究概要 |
本研究は水素化物を造る合金に於いて水素化物を転位の固着源として作用させ強ひずみ加工により多量のひずみエネルギを導入し、急速再結晶にて組織微細化を図ったものである。その後、機械的性質への影響を取り除くため脱水素処理を行う。材料は水素化物の生成・解離が容易なMg元素を含有している5083A1材を対象に、H12年度は1)水素吸蔵条件の把握と水素化物の存在の同定、2)強ひずみ加工条件と材料組織、引張り特性、H13年度は1)疲労、腐食、超塑性特性等の微細組織材の有する特性評価、2)外力負荷形態を変化させた場合の蓄積ひずみエネルギの変化・再結晶粒分布との関係を求めることを目的とした。得られた知見は以下のようである。 1):合金中に水素化物MgH2を生成させるには773K,0.4MPa,4hr以上の条件下で吸蔵処理する必要があり、水素化物の量的存在、存在位置の確認はX線、トリチウムを利用して沮淀・確認できる。 2):強化工、再結晶処理後の脱水素処理条件は523K,0.1Pa,30hr以上の条件が必要で,この処理に伴う粒径成長は認められなかった。 3):強化工として圧延を用い平均粒径25μmの微細材を得ることが出来、水素量の増加と共に結晶粒径は微細になり、降伏応力、引張り強さは水素未処理材に比較し、それぞれ1.2倍、1.3倍上昇した。 4):疲労強度も鋳造材に比較し上昇し、平均粒径9μmの材料では鋳造材と比較し8割上昇した。 5):浸漬実験より鋳造材のそれに比べても完全再結晶した微細材の腐食に対する粒径寸法効果は見られなかった。しかし、再結晶が不完全な場合は旧粗大粒界での腐食が優先し、粒経寸法依存性が顕著である。 6):初期粒径寸法を減少させ水素吸蔵量を増やすため鍛造加工をすることは効果があるが、加工後・再結晶処理した後に吸蔵処理する必要がある。この鍛造も自由鍛造より側面を拘束した3面拘束鍛造の方がより効果的である。
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