本研究課題では、表面にポリマーを化学結合(グラフト)した無機超微粒子の存在下でゾルーゲル反応を行うことにより、無機超微粒子がマトリックスゲル中にナノレベルのオーダーで均一に分散した、可撓性のある無機/有機複合膜の合成を目指す。さらに、得られた無機/有機複合膜の表面にも様々なポリマーをグラフトする反応について検討し、「濡れ性」や「吸着特性」等の複合膜表面の特性を任意に制御する手法を確立して、種々の溶媒を選択的に吸着する性質、すなわち、溶媒センシング機能を付与することを試みる。 平成13年度は、無機超微粒子としてポリマーを表面グラフトしたカーボンブラック(CB)を選択し、マトリックスゲルの構成原料にケイ素アルコキシドを用いて、ゾルーゲル反応により合成したCB含有無機/有機複合膜の表面にさらにポリマーをグラフトする反応と、複合膜の表面特性制御について検討した。 合成したCB含有無機/有機複合膜の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いてビニルモノマーの重合を行い、系内で生成する生長ポリマーラジカルを複合膜中に分散しているCB粒子に捕捉させることにより、対応するビニルポリマーを無機/有機複合膜表面にグラフトする反応について検討したところ、グラフト率(複合膜に対するグラフトしたポリマーの質量%)が3(8160)168%のものが得られた。 また、得られたポリマーを表面グラフトしたCB含有無機/有機複合膜について、溶媒を選択的に吸着する性質、すなわち溶媒センシング機能をテストしたところ、浸漬溶媒に対する、CBのグラフト鎖の親和性と複合膜表面のグラフト鎖の親和性とが一致する場合は、溶媒の選択的吸着特性が増大することがわかった。従って、CB表面のグラフト鎖と複合膜表面のグラフト鎖とを適宜選択することにより、無機/有機複合膜の液相吸着特性を任意に制御できる可能性が示唆され、溶媒センサーへの応用も期待できる。
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