本研究課題では、表面にポリマーを化学結合(グラフト)した無機超微粒子の存在下でゾル-ゲル反応を行うことにより、無機超微粒子がマトリックスゲル中にナノレベルのオーダーで均一に分散した、可撓性のある無機/有機複合膜を合成した。さらに、得られた無機/有機複合膜の表面にもポリマーをグラフトする反応について検討し、複合膜表面の特性を任意に制御する手法を確立して、種々の溶媒を選択的に吸着する性質、すなわち、溶媒センシング機能を付与する試みについて検討した。 アゾ基を導入したカーボンブラック(CB)を開始剤に用いたラジカルグラフト重合により、及びp-トルエンスルホン酸メチルを開始剤に用いたリビングカチオン重合の生長末端カチオンとCB粒子表面との反応により、ポリマーグラフト化CBを合成した。このようなCB粒子存在下でゾル-ゲル反応を行ったところ、CB粒子がゲル中に均一に分散した、深黒色の比較的柔軟な無機/有機複合膜を合成できることが明らかになった。 合成したCB含有無機/有機複合膜の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いてビニルモノマーの重合を行い、系内で生成する生長ポリマーラジカルを複合膜中に分散しているCB粒子に捕捉させることにより、対応するビニルポリマーが無機/有機複合膜表面にグラフトすることがわかった。得られたポリマーを表面グラフトしたCB含有無機/有機複合膜について、溶媒を選択的に吸着する性質、すなわち溶媒センシング機能をテストしたところ、浸漬溶媒に対する、CBのグラフト鎖の親和性と複合膜表面のグラフト鎖の親和性とが一致する場合は、溶媒の選択的吸着特性が増大することが明らかになり、無機/有機複合膜の液相吸着特性を任意に制御できる可能性が示唆された。
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