研究概要 |
溶融池内の気泡挙動を明確にするため,アルミニウム合金を電子ビーム溶接する際の溶融池内の対流現象を詳細に検討した.5NAlとAl-6%Cu系合金,A2219を微小重力環境下および地上で横向き姿勢で突合せ溶接を行い,溶融池内のCuの分布を調べることにより,対流の度合いを測定した.また比較実験として,鉄系合金である3NFeとFe-6%W合金,SKD4の突合せ溶接を行った.その結果,鉄系合金を電子ビーム溶接する場合には,従来報告されている様に表面張力による対流が支配的であるが,アルミニウム系合金を電子ビーム溶接する場合には,支配的であると言われていた表面張力による対流は,密度差による対流より小さいことがわかった.このように,アルミニウム合金の溶融池内の対流が非常に小さいことは,気泡挙動に大きく影響を及ぼし,微小重力環境下で発生する気孔の数を地上環境下よりも減少させる.また,原子状酸素をアルミニウム表面に照射することにより酸化皮膜が増加させた試料を用いて溶接実験を行った.その結果,気孔量が増加し,4Al(1)+A1_2O_3(s)→3Al_2O(g)↑の反応によって気泡が生成する仮説を肯定する結果が得られた. また,凝固組織に関しては,地上でアルミニウム合金を横向き溶接を行った場合,微小重力環境下に比べて,溶融池下部では溶融池の垂れ下がりにより凝固速度が遅くなり,羽毛組織が形成しやすいこと,ビード中央部の結晶粒径が大きくなることを明らかにした.また,溶接部が部分溶込みの場合には,凝固速度は重力の影響をあまり受けないが,完全溶け込みの場合には,凝固速度は重力の影響を受けて変化することを明確にした.
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