本研究は錯体重合法を用いて微細組織制御を行った酸化物熱電変換材料を作製し、その熱電特性の評価を行うものである。錯体重合法はあらゆる酸化物材料の作製に有効であると考えられるが、本研究ではZn_<1-x>Al_xO系を中心に検討した。所定量の硝酸亜鉛と硝酸アルミニウムの水和物および適量のクエン酸、エチレングリコールをホットプレート上にて300〜400℃まで3〜4時間かけてゆっくり加熱した。これにより金属(亜鉛およびアルミニウム)とクエン酸の間でキレート錯体が形成され、このキレート錯体とエチレングリコールとの間で縮退重合が起こり、金属イオンを均一に取り込んだポリエステル樹脂が生成した。得られたポリエステル樹脂を空気中450℃〜900℃において加熱分解して樹脂中の水素および炭素を完全に取り除くことにより、非常に微細で成分元素が均一に混合された前駆体粉末が得られた。得られた粉末をカーボンダイスに詰め、SPS(放電プラズマ焼結装置)により10〜30MPaの圧力下、1100℃で数時間加熱して焼結させた。得られた焼結体についてX線回折により相同定を行った結果、x<0.05の試料ではウルツ鉱型ZnOの回折ピークのみが観察されたが、x≧0.05の試料ではスピネル構造を持ったZnAl_2O_4の回折ピークが観察された。NMRによりさらにZnサイトへのAlの固溶限界を詳しく検討した結果、Alの固溶域はX線回折による結果よりさらに狭く、約x=0.005であることがわかった。SEMによる組織観察を行った結果、結晶粒が微細で十分緻密な焼結体試料が得られていることが確認できた。以上のように、錯体重合法とSPSを組み合わせることにより緻密で均一なZn_<1-x>Al_xO焼結体が得られることが明らかとなった。
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