本研究は錯体重合法を用いて微細構造制御した酸化物熱電変換材料を作製し、その熱電特性の評価を行うものである。錯体重合法はあらゆる酸化物材料の作製に有効であると考えられるが、本研究ではZn_<1-x>Al_xO系のほか、層状構造を持つNa_xCo_2O_4系について検討を行った。所定量の各金属元素の硝酸塩とクエン酸をエチレングリコールに加え、加熱濃縮することにより錯体重合体を得た。これを空気中で加熱分解することにより重合体を構成する高分子ポリマーを完全に取り除き、結晶粒が非常に微細で成分元素が均一に混合された前駆体粉末を得た。その粉末をZnO系の場合はSPS(放電プラズマ焼結)により10〜30MPaの圧力下1100℃で10分間、Na_xCo_2O_4系の場合はホットプレスにより25MPaの圧力下900℃で1〜2時間加熱して焼結体試料を得た。得られた焼結体試料についてX線回折による相同定、SEM観察、ゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率などの物性を測定した。錯体重合法で作製したZn_<1-x>Al_xO焼結体試料の結晶粒径は約1〜2μmであり、固相反応による試料の粒径10μmに比べてはるかに小さかった。ゼーベック係数の絶対値および電気抵抗率はAl添加量の増加に伴い減少する傾向が見られたが、同じ添加量の固相反応法による試料と比べた場合、その値は小さかった。結晶粒が微細になったにもかかわらず、熱伝導率の減少はあまり認められなかった。これらの結果は、錯体重合法による試料の方が均質であり、試料への微小キャリアドープが容易に行えることを示している。一方、錯体重合法で作製したNa_xCo_2O_4系では、固相法による試料に比べて結晶粒の配向性が良く、ゼーベック係数があまり変化することなく電気抵抗率が減少し、性能指数は上昇した。
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