研究概要 |
本年度の研究実施目標は次の3項目である。(1)鉄酸化細菌による腐食加工の機構解明(昨年度からの継続),(2)表面粗さのコントロール,(3)機器モデル試験、(4>微生物腐食加工の応用調査。以下実施内容について報告する。 (1)鉄酸化細菌による腐食加工の機構解明(昨年度からの継続):9K培地中では金属表面にFeSO_4皮膜が生成し加工が抑制されるが,培養済み溶液中ではFeSO_4皮膜生成は見られず,鉄酸化細菌の作用で生成したFe_2(SO_4)_3が酸化剤として作用するため,軟鋼と銅の加工が促進されることを表面のSEM観察とEPMA分析により明らかにした。(2)表面粗さのコントロール:昨年度の研究で軟鋼の加工量は大きいが表面粗さも大きいことから,インヒビターにより表面を制御ため,有機系インヒビターとしてチオ尿素,1.3-ジフェニルチオ尿素,1.3-ジプチル-2-チオ尿素,2-プロピン-1-オール,ベンゾトリアゾールの5種類の効果を電気化学的測定と表面観察により検討した。表面粗さはチオ尿素の添加で微細になった。(3)機器モデル試験:配管系を模擬して溶液を循環して供給する装置を試作し,装置の配管の一部に内径20mm,長さ200mmの軟鋼のチューブをセットし、培養済み溶液を流して加工実験を実施した。一週間程度の実験であったが,配管内部を加工できることを確認した。(4)微生物腐食加工の応用調査:金属としてAl, Zn, Ni, Pb, Crを用いて培養済み溶液中での溶解量を測定した。Al, Zn, Niの溶解量は大きいが,Pb, Crの溶解量は非常に小さい。ゴミ焼却灰や石炭灰からの重金属の除去では,金属の酸化物や塩化物を用いた検討が必要である。
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