研究概要 |
半導体用ボンディングワイヤとして使用されている金線には,集積回路のよりいっそうの微細化に伴い,線径の微細化と高強度・高弾性化が要求されている。本研究ではこの問題に対し,金単結晶における弾性率の異方性,すなわち<100>方向に比べ<111>方向はおよそ3倍高い値をとることに着目して,集合組織制御によって高度に<111>集合組織が発達する金線の製造プロセス確立のための基礎的知見を得ることを目的として実験を行った。平成12年度は純度99.999mass%の高純度金線(5N材)を使用したが、平成13年度は希薄合金化した純度99.95mass%材(3N材)の引抜き加工中の集合組織の形成および発達過程を調査した。実験で用いた試料は直径10mmの丸棒試料で,これを最終線径30μmまで引抜き加工を行い,途中種々の減面率でサンプリングし,X線極点図および3次元結晶方位分関数(ODF)により集合組織解析を行った.3N材の場合も5N材と同様,引抜き加工により<111>+<100>の二重繊維組織が形成するが,5N材とは異なり基本的に<111>軸成分が強くなり,この傾向は極細線加工領域,すなわち減面率99.999%においても維持されることがわかった.さらに,最終線径を30μmに統一し,それに至る減面率が異なる試料について<111>および<100>軸成分の強度を調べた結果,減面率が99.96%から99.999%に至るまで<111>軸成分の強度が高くなることがわかった.また,減面率によって<100>軸成分に対する<111>軸成分の割合は変化した.これらの結果は3N材では強ひずみ領域においても再結晶が抑制され,<111>集合組織が発達した極細線の製造が可能であることを示しており,合金成分や減面率などの加工条件,さらには熱処理条件の最適化により金極細線の高弾性率化が可能となることを強く示唆しているものと考えられる.
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