本研究は化合物半導体をシリコン半導体技術と整合利用することを究極の目的としている。そして、シリコン上に形成される化合物は通常気相法によって合成されるが、本研究はシリコン上にオンチップで化合物半導体を形成する新しい方法の開発を目指している。化合物半導体を有効に利用するためには、固溶系、非固溶系を含めて多種、多様な化学組成を要求される。材質としての均一性を安価に実現する方法として液相由来の粒子状原料を使用する印刷法をあげることができる。本研究ではテルル化カドミウムを取り上げ、印刷法に適した粒子レベルで均一なナノサイズ、テルル化カドミウム粒子の合成法について研究した。酢酸カドミウム二水和物と四塩化テルルを出発原料として、金属アルコキシドを合成した後、その加水分解生成物であるテルル酸カドミウムを水素気流中で還元する方法によりテルル化カドミウムを合成する方法について検討を行った。酢酸カドミウムニ水和物を130℃で真空乾燥し、無水酢酸カドミウムとする。また、四塩化テルルとナトリウムエトキシドをトルエン溶媒中で反応させることによりテルルエトキシドを合成する。得られたテルルエトキシドと先に調製した無水酢酸カドミウム、そしてナトリウムエトキシドを化学量論で反応させ、カドミウムテルルエトキシドを合成した。これを加水分解することによって非晶質、ナノ粒子のテルル酸カドミウムを得た。ナノ粒子テルル酸カドミウムをエチルセルロースをバインダー、テレピネオールをビヒクルとしてペースト化し、ソーラガラス基板上に印刷塗布、これを水素気流中、300℃以上で熱処理することによってテルル化カドミウム膜が作成できることを明らかにした。本方法によるテルル化カドミウム膜の合成は高純度化が容易であり、また他のテルル化物との混晶系や、チタン酸バリウムなどの強誘電体酸化物とのナノ複合体膜の低温合成に道を拓くものである。
|