研究概要 |
超音波プラスチック接合における接合機構を検討するため、今年度は研究内容を大きく2つに分けた。1つは超音波振動を与えたときの発熱機構のモデル化およびシミュレーションであり、もう1つは代表的な難溶着性材料と異種材との超音波接合の試みである。対象はいずれも2枚重ねにしたプラスチックフィルムの接合である。 前者では剪断振動を与えたときの発熱モデルとして、界面における摩擦発熱と材料の粘弾性に伴う粘性発熱に着目したモデルを提案し,シミュレーションにより発熱現象を定性的に明らかにした。その結果,現在利用されている周波数帯域では摩擦発熱が優勢であること,アンビルと下層フィルムとの間は完全固定が最良であること,フィルム界面の摩擦抵抗係数が小さいほど発熱量が大きいこと,材料の第1次共振点より充分に低い周波数領域では摩擦発熱が支配的であるが、共振点近傍のより高い周波数においては粘性発熱が支配的になること、などが分かった。さらにシミュレーション結果の評価のため、新たに捩り振動子を製作し,接合実験を行った。 後者では摩擦を加えたときの表面形状の変化により材料を3つの型に分類した。剪断型(代表例はテフロン:PTFE)、炭化型(代表例はポリイミド:PI)、溶融型(汎用プラスチック)である。溶融型の代表例として,ここではポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)を用いた。現在までにPTFE/PTFE、PI/PIおよびPTFE/PP,PTFE/PEの組み合わせについて接合状態が得られた。接合部剥がし面のX線光分光分析結果からは新たな物質の生成が見られないこと,SEMによる接合部の観察、および接合強度が引張り方向に強く剥がし方向に弱いことから、超音波振動による発熱と攪拌効果によって機械的に接合していることが分かった。さらに異種材料間の接合の可否を検討するため、ポリイミドと銅の接合実験も試み、接合状態を得た。
|