研究概要 |
傾斜構造セラミック薄膜基板の焼成過程では気孔構造に起因してそりがしばしば生じる.本研究では傾斜機能材料の焼結解析法を本プロセスに適用し,そりの起こらない最適条件を見出すことを目的とする.今年度は解析の基礎となる焼結構成モデルを改良し,粒度分布及びその焼結中の変化を考慮できるように発展させた. 1.粒径分布の影響 Panらの異径2粒子の焼結収縮に関する数値解析結果を基に,異径粒子の効果を粘性係数の変動として表す式を作成した.正規分布を例に取り,対象とする全ての粒子の組み合わせを考慮して修正粘性係数を計算したところ,分布が広がるにつれ粘性係数は低下し,すなわちひずみ速度が増加し,ある程度のところでほぼ一定となることがわかった.ひずみ速度が増加するのは小さな粒子が大きな粒子に取り込まれる速度が大きいことから説明がついた. 2.粒度分布の変化 瞬間の粒成長臨界半径より小さい粒子は消滅に向かうとするSivakumarらと同様の方法を用い,焼結中の粒度分布の変化を計算した.10層の傾斜分布を想定した計算例では,基板下部の大きな粒子の数はあまり変化しないのに対し.上部の小さな粒子が粒成長により優先的に減少していくことがわかった. これらを焼結モデルを組み入れ,実際の傾斜構造に対する焼結変形解析を行った.平均粒径を用いた従来モデルでは基板が必ずそる計算結果となるのに対し,本モデルを用いた場合はある条件でそりが見られなかった.これは基板上部の微小粒子の減少に伴う焼結速度の低下に起因しており,実際の現象をよく表すことができた.
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