研究概要 |
1.前年度設計製作した順加工式超微細表面圧造装置によりバルク成形と微細表面形状の成形とを分離した加工を試みた.超微粒子超硬合金工具表面をRz30nmまで鏡面研磨仕上げを行い,そのうえに溝状のパターンと三角錐形状の窪みを形成した.この形状をAFM(原子間力顕微鏡)により計測したのち,アルミニウム円形素板(板厚2mm,直径30mm)に対して,2段階で微細形状転写を行った.素板外周部に巨視的盛り上がりを許すゾーンを設定してバルク変形を誘起させた.予備成形の荷重を変えてバルク変形量の異なるブランクを得たのち,同一の荷重で第2段階の微細表面形状の加工を行った.その結果予備成形を行うことでより高い盛り上がり・充満を得られた. このとき潤滑条件については,微量の液体潤滑剤でも接触開始初期に工具窪みに集まってくる傾向があることから,いわゆるドライ加工に近い条件で加工することを試みた.エタノールを塗布後,50℃の温風で乾燥させて吸着層だけを残すことを想定した加工を行ったが,水分等の残存の問題が残っている. 2.前年度の方針に従って,3次元的に微細表面形状の転写精度を数値評価する方法の検討を進めた.AFMにより取得した3次元形状データをアスキーファイルとしてして取り出し,ワークステーション上で構築している形状精度評価ソフトに適用した.このソフトウエアでは被加工材形状の空間的凹凸反転と鏡映対称反転を施した後,工具形状データと重ね合わせ,表面が評価空間で1点でも接触したらそこを限界としてまず平均隙間を評価する.次にその接触点が特異点である可能性を考慮して,数点の接触まで接近させて評価する.さらに空間の平均すきまを最小にする平面的重ね合わせ位置・角度を探索する.これによって転写精度の3次元的評価が行えるようになり,転写工具と被加工材の形状差は平均厚さで100nm以下に来ていることが確認できた.
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