溶融合金・溶融塩間の界面偏析に関しては、熱力学的にその現象が生じる可能性は認められているものの、特に融体を対象とした場合には実験的にその偏析現象を直接観察できない。この偏析現象は界面近傍の数原子層内で生じているが、この種の小さな領域内における状態の変化に敏感に対応する電気毛管現象に着目すれば、界面偏析を実験的に確認できると考えられる。本研究では、電気毛管曲線を測定する装置を試作するとともに、溶融合金-溶融塩系の界面電気容量の測定を行い、界面偏析の実験的確認を行うことを目的としている。本研究では、先ず、溶融Ga-Bi合金と溶融KCl-LiCl系に対する電気毛管曲線を測定する装置を作製した。次に同物質系に対する電気毛管曲線の測定を溶融Ga-Bi合金中のBi濃度を変化させて行った。その結果より各種成分濃度の溶融合金と溶融塩界面における界面電気容量を求めたところ、Butlerの式から計算した表面Bi濃度のバルク濃度依存性に対応する関係が得られた。界面電気容量は界面における成分の濃度に比例すると考えられるので、電気毛管曲線を測定し、界面電気容量を求めれば、溶融合金-溶融塩界面の偏析量を定量的に評価できることが明らかとなった。また、電気毛管曲線の測定と併行し、溶融Ga-Bi合金の表面張力の測定を行い、Butlerの式から得られる表面張力の計算結果との比較を行い、両者が良く一致することを確認した。このことは、Butlerの式から推算したバルク濃度に対する表面Bi濃度の値の妥当性を示している。
|