研究概要 |
1 均一液滴スプレー・デポジット法により、直径約200μmの溶融すず-5wt鉛滴をすず単結晶平板に衝突・堆積させた.凝固後のミクロ組織を観察し、以下のような結果が得られた. (1)液滴の初期温度が凝固温度より高い場合(過熱)、planar成長が観察された. (2)液滴の初期温度が凝固温度より低い場合(過冷)にある場合、デンドライト成長が観察された. (3)液滴温度をさらに低くすると、planar成長に推移した. (4)いずれの場合もエピタキシャル成長した. 2 非平衡凝固モデルを用いて上記実験条件における凝固現象を解析し,以下のような結果が得られた. (1)基板(すず単結晶)と液滴の間に接触熱抵抗が存在する場合,初期液滴温度に対する結晶成長の変化の依存性は小さいことが予測された.上記の実験結果を勘案すれば,接触熱抵抗がほとんどないことが示唆された. (2)接触熱抵抗がない場合を解析した結果,液滴の過冷度が大きくなるほど,デンドライト成長からplanar成長へ移行する傾向が見られた.このことは,実験結果と定性的に一致する. (3)しかし,液滴が過熱されている場合には,デンドライト成長しか予測できず,実験結果と定性的に一致しなかった. 3 実験結果と解析結果が完全に一致しない理由として,以下のことが挙げられる. (1)液滴の変形が考慮されていないこと.特に,液滴が過熱されている場合,変形を考慮すれば,凝固面の進行速度は上記の解析結果より遅くなる可能性があり,planar成長が予測される可能性がある. (2)ここで使用しているミクロ組織の成長モデルは,冷却速度一定という準定常状態において成り立つ.しかし,ここで対象としている系は非定常である.したがって,本成長モデルが非定常状態に適用できない可能性がある.
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