無容器プロセス(Containerless Processing)は、均一核生成を可能とする新たな溶融・凝固法である。申請者は、La55Al25Cu10Ni5Co55元試料液滴を20〜30K/s程度の凝固速度条件下で溶融凝固させた結果、核生成が100K程度抑制される特異な過冷凝固過程を見出し、さらに既存核生成理論では、溶湯内部の異種物質は異質核生成サイトとなって結晶化を促進すると考えて全く矛盾のないことに反し、SiCウイスカーを0.1〜0.5vol%添加することによって、過冷却の増大とこれに依存した核生成の顕著な抑制現象を見出し、これを定量的に解析した。上記試料液滴が核生成する温度直前の過冷液体にHeガス(噴出圧:0.01〜0.2MPa)を用いて強制冷却(冷却速度:最大100K/s)させる2段階の凝固実験を行い、結晶相晶出からバルクアモルファス生成までの過冷凝固過程と核生成変化を明確に示した。また落下塔JAMICを利用し、申請者が試作・開発した1/4ラック搭載用液滴実験用装置を用いて、液滴試料にトリガー(核生成用針)あるいはチルプレートを接触させ、局所領域の温度変化(過冷度ΔT)を定量的に測定した。その結果、La系5元液滴試料にSiCウイスカーを0.25%程度添加することによって、バルクアモルファス生成までの過冷は示され、併せて微小重力環環境下で溶融・凝固させた冷却発現はより増大する結果を得たさらに、異質核生成実験を利用した上記現象に対する解析実験の結果から、SiCプレートで接触された界面の過冷度は、Cuチルプレートで接触させた試料よりも著しく増大し、凝固後試料もSiCプレートで顕著に微細化する結果が認められた。以上本研究結果から、SiC添加La系5元試料の過冷凝固過程に伴う特異な核生成現象は明確に示され、これは無容器プロセスと微小重力環境の相乗効果に起因した、新たな非平衡状態下での核生成現象を明確に示す結果と考える。
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