エチレンオキサイドを生産する現有の触媒充填層反応器(長さ90cm、直径2.5cm)において、現有のプロセスガスクロマトグラフを用いて生成物濃度が測定することにより、本プロセスの反応速度を同定した。本反応系はエチレンオキサイドが生成する反応と、二酸化炭素が生成する副反応が併発して起きる。反応器出口で、エチレンオキサイドと二酸化炭素の濃度を測定することでこれらの反応速度を同定した。 次に反応器の動的挙動を表す物理モデルを、反応器の物質収支とエネルギー収支をもとに構築した。このモデルには上記の反応速度を取り入れた。構築築したモデルを用いてシミュレーションを行った結果、反応器入り口付近でHot spotが生じる事が確認された.実際の実験装置で反応を行った場合においても、反応器入り口付近でHot spotが生じ、シミュレーション結果は実プロセスの挙動をある程度予測できることがわかった。そこで、反応器から測定される温度の情報のみから反応器内部の温度分布や濃度分布が推定可能であるかを確認するため、構築した物理モデルを基にオブザーバを構成して状態推定を試みた。オブザーバには、非線形モデルにも適用可能な拡張カルマンフィルタを用いた。 シミュレーションの挙動とオプザーバによる推定結果を比較したところ、6から8点の測定温度から反応器内部の温度分布や濃度分布を比較的正確に推定可能であることが確認できた。特に反応速度に若干の違いがあるようなモデル誤差がある場合にも、濃度分布の推定誤差が少ないことから、本推定法は実プロセスにも適用可能であるものと考えられる。
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