研究概要 |
各種,ダイオキシンのモデル物質としてビフェニルを,土壌として炭素含量約5.6%の黒ボク土を用いて以下の研究を行い、以下の結果を得た。 (1)各種CD水溶液にビフェニルを溶解させ、ビフェニルの水への溶解度促進効果を測定した。ビフェニル溶解度は、水溶液中のCD濃度にほぼ正比例して増加した。特に、HP-β-CD、Methyl-β-CD水溶液に関するビフェニル溶解度が高くなっており、これらのCDがビフェニルの可溶化を促進した。HP-β-CDの安定度定数はきわめて高く、土壌に吸着したビフェニルの包接脱離除去に有効であると考えられる。 (2)黒ぼく土へのビフェニル吸着平衡を測定した。吸着平衡曲線はLangmuir型であった。 (3)ビフェニル吸着土壌、およびビフェニル吸着土壌とHP-β-CDを混練して作成した土壌を用いて水へのビフェニル溶解実験を行い、HP-β-CDによる包接脱離効果を検討した。ビフェニルの水への溶解量はHP-β-CDを添加しない系に比較して、添加したものは約18倍と著しく増加した。 (4)HP-β-CDをあらかじめビフェニル吸着土壌と混練した場合は、混練しない場合と比較してビフェニルの脱離溶解速度が極めて速かった。このことは、ビフェニルとHP-β-CDの包接複合体が土壌混練中に形成され、振盪により水溶液中に速やかに溶出することを示している。 (5)HP-β-CDの添加量が増加するにつれて、ビフェニルの最大溶解量及び溶解速度が著しく増加した。最大溶解量は、溶解平衡、吸着平衡を仮定したビフェニル物質収支によって推算可能であった。 (6)HP-β-CDをビフェニル濃度の10モル倍および20モル倍添加した水溶液に、活性汚泥を加え、好気条件で培養した。培養開始6日目から急激なビフェニル濃度の減少が観察された。また、この急激なビフェニル濃度の減少に対応して、代謝中間生成物である安息香酸の濃度が増加した。
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