(1)水晶振動子と高周波発振回路を組み合わせたピエゾセンサーを製作して、汚染物の付着量を振動周波数の変化として表す高感度質量モニタを開発し、テスト汚染ガスを用いた性能試験を行った。水晶振動子の基準周波数を5MHzから25MHzに増大することで、付着量とその時間変化の測定を大幅に高分解能化させた。 (2)トルエン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートを含む汚染ガスの付着量を計測し、本装置が数十秒の時間分解能を有し実時間モニタリング装置として有用であることを検証した。また、ガスの濃度、温度、湿度など環境因子の変化による付着速度の変化を明らかにした。さらに、水晶振動子の電極を、金、銀、および酸化シリコンで被覆することで、付着速度の壁面材質に対する依存性を明らかにした。 (3)汚染ガスの濃度を変化させた試験、と実働のクリーンルームを用いた性能評価を行った。付着と脱離が連続して起こる場合でも、本装置が付着量を十分な時間分解能で計測できること、および、複数個のセンサーの同時測定によりリアルタイム汚染ガス発生源推定ができることを示した。また、ケミカルフィルタ流通後の空気のモニタも行い、フィルタの破過を迅速に検知できることも示した。 (4)気中イオンにより発生させたクラスターの粒径分布を、微分型静電分級装置と高感度微小電流計のシステムを構築することで明らかにした。水のクラスターの壁面への付着速度ならびにα線、軟X線によりイオンクラスター化したガス状物質の微粒子への付着挙動を計測によって求めた。 (5)汚染ガスの壁面への輸送を表すモデルと、表面での吸脱着を考慮した付着を表すモデルを、複数の汚染ガスが共存する場合について提案し、計算プログラムを作成した。計算結果と実験で得られた付着挙動データとの比較検討を行い、モデルの妥当性を検証し、また汚染ガスの壁面付着に影響する因子を整理した。
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