本研究は炭素系材料の効果的な表面処理法を確立することを目標とし、はじめに、種々の分析法によって活性炭表面(AC)を詳細にキャラクタライズした。次いで、過酸化水素水処理(AC-ox)および硝酸処理(AC-NO_3)によって活性炭表面に導入された官能基の定量的な検討や真に有効なサイトを直接解析するため、種々の吸着プローブを選定するとともに、それに適合する赤外スペクトル測定システムを開発した。本研究で得られた結果を以下に概略する。 123Kで活性炭(AC)に物理吸着した一酸化炭素のIRピークが観測された。汎用吸着剤である活性炭へのCO物理吸着種の赤外スペクトルはこれまでに報告がなく、初めてのものと言える。スペクトルの波形解析から、COが主としてグラファイト表面に吸着し、弱い静電場サイトにもわずかに吸着することがわかった。AC-oxでは、吸着に有効な表面サイトの極性がやや大きくなることが示された。 室温でACに吸着したベンゼンの面外変角振動領域のIRスペクトルから、ベンゼン分子がグラファイト層間と非静電的に強く相互作用していることが示された。AC-ox表面でも、極性官能基はベンゼン吸着に大きな影響を及ぼすことはなく、高被覆率時にのみ影響があることがわかった。 室温でACに吸着したピリジンのIRスペクトルでは、ピリジンが活性炭上に主として物理吸着し、同時に弱いLewis酸点にも吸着していることが示唆された。このLewis酸点への吸着種は酸化処理すると大きくなることから、処理条件を選択することによって、吸着質が接近可能な位置に弱い酸点を導入できることがわかった。一方、硝酸で処理した試料では、表面ニトロ基とピリジンが相互作用していることが示され、改質剤の選択と表面に対する本評価法の併用により表面の定量的な修飾が可能であることがわかった。
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