本年度の研究成果の中から下記3テーマについてまとめた。 1.クエン酸共存下ゾルゲル法で作製したシリカゲルは、1000m^2g^<-1>程度の高い比表面積を持ち、その細孔サイズをクエン酸の量を変えることで10nmまでの任意のサイズに制御できた。この系における細孔形成は、多くの有機無機複合体からの細孔形成と異なり、超臨界乾燥におけるエアロゲル作製と類似した機構により細孔が形成されるという仮説を提案した。また、ポリオキシエチレン鎖を持つ有機物がゾルゲル過程においてシリカの重合過程に及ぼす影響、細孔形成に及ぼす影響を明らかにした。 2.ケイ素アルコキシドのゾルゲル過程において相分離の過渡的構造をゲル化で凍結することにより、マイクロメートル領域の連続貫通孔を持つシリカゲルを作製できる。また、担持触媒への応用としてNi/SiO_2系にも適用し、広い組成範囲でモルフォロジー制御が可能なこと、Niの高分散状態を容易に達成できることがわかった。複合酸化物系触媒としてシリカ-アルミナ系にも適用し、同様にマクロ細孔サイズが制御可能なこと、通常のシリカアルミナ触媒に比べて特異的に強いブレンステッド酸点が発現することを見出した。 3.細孔内拡散が反応活性に与える影響を評価するため、分光学的手法を用いた簡便かつ高精度な透明ゲル・多孔体内液相中の溶質の拡散係数評価方法を開発した。この手法を用いて系統的にSi含有量の異なるゲルを作製してゲル内溶質の拡散係数を測定したところ、Si含有量やゲル作製時のH2O/Si-OR比の変化に従い系統的に拡散係数が変化することがわかった。
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