NOx還元触媒として有効性が認められた銅/チタニア系酸化物触媒の抗菌性とそのメカニズムを解明するため以下の実験を試みた。銅/チタニア、マグネシア/チタニア、銅-マグネシア/チタニアの3種類の試料を含浸坦持により調製した。坦持物の濃度はそれぞれ1wt%である。試料は大気中873Kで3時間焼成したものを実験に供した。試料の抗菌特性は、10^4/mlに調製した大腸菌液に試料を接触させ生菌数の経時変化から評価した。また、活性酸素種ラジカルの測定には、DMPOスピントラッピング法を利用した。銅-マグネシア/チタニア、銅/チタニアでは有効な抗菌性が認められ、それぞれ15分後、45分後で生菌数がゼロとなった。一方、チタニアのみ、マグネシア/チタニアでは、大腸菌液に1時間接触をしても生菌数に著しい変化は検出されなかった。スピントラッピング法によると、試料表面で生成する活性酸素種ラジカルは、主にOHラジカルであり生成量が銅-マグネシア/チタニアで最も多く、抗菌性が現れなかったチタニア、マグネシア/チタニアではゼロであることから、抗菌特性のメカニズムとしてOHラジカルの生成が支持された。Mg K-edge XANES測定の結果、マグネシア/チタニアの2元系試料では焼成でチタン酸マグネシウムの複合酸化物が生成し、マグネシウム周りの環境構造が変化していることが判った。また、銅-マグネシア/チタニアではマグネシウム周りの環境構造は変化せず、6配位のマグネシアとして表面に存在することが明らかとなった。ESR測定の結果、現状では詳細な検討が必要ではあるが、銅-マグネシア/チタニアの吸着酸素のスペクトルが他の試料に比べ特徴的であり、活性酸素種ラジカルの生成に関連があるものと思われる。従って、銅-マグネシア/チタニアでは、活性酸素種ラジカルの生成に有効な表面構造を持つため、抗菌性が向上したと考えられる。
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