今年度は、銅-マグネシア/チタニア3元系触媒について、異なる坦持条件で表面構造の制御を試み、それらの抗菌特性との関連を考察した。実験に供した試料は、銅、マグネシウムの両イオンを溶液中でチタニアに共坦持したCu-Mg/TiO_2(C-M/T)、先に銅イオンを坦持した銅/チタニアをマグネシウムイオンの溶解した溶液中で坦持したMg/Cu/TiO_2(MC/T)、MC/Tと逆の順序で坦持したCu/Mg/TiO_2(CM/T)の3種類である。XANES、ESR測定の結果から、CM/Tでは銅がマグネシア/チタニア界面に濃縮して偏析しているのに対し、C-M/TとMC/Tでは最表面に露出した銅の割合が大きく、銅の還元が容易である表面構造であることが判った。また、大腸菌に対する抗菌性は、銅が最表面に露出したC-M/T、MC/TがCM/Tに比べ強い傾向となった。一方、活性酸素種ラジカルの生成量と銅イオンの溶出量には相関性があり、C-M/T、CM/T、MC/Tの順で多くなることが判った。この結果は、本研究で検出された活性酸素種ラジカルや金属イオンが、大腸菌を死滅させる直接の原因ではないことを示している。更に本年度はNOx還元触媒として有効な銅-鉄/ジルコニア触媒の抗菌特性ついても検討を行った。NOx還元特性では銅/ジルコニアに比べ活性が高い鉄/ジルコニアが、抗菌特性では活性を全く示さないなどNOx還元能との相関性は見出せなかった。しかしながら、銅/ジルコニアに鉄を坦持すると、抗菌特性や活性酸素種ラジカルの生成能が向上した。この原因はESR測定によるとCu^<2+>の強度が鉄坦持により減少することから、銅の電子構造が変化したためと考えられる。以上の結果から、抗菌メカニズムの解明には、試料表面における銅の環境構造や、それに起因する電子の易動度など詳細な実験データが必要と考えられ、今後の課題である。
|