本研究では、NOx還元触媒としても有効性が報告されている銅-マグネシア/チタニア、銅-鉄/ジルコニアの抗菌活性に着目し、排気処理温度や担持順序など試料調製条件との関連性について調べることを目的に実験を遂行した。得られた研究成果は以下のように要約される。予備実験として行った銅/チタニア、マグネシア/チタニアの抗菌活性に及ぼす排気処理温度の影響については、両者で異なる傾向が観察された。抗菌能に変化が現れなかったマグネシア/チタニアに対し、銅/チタニアでは排気処理温度の上昇に伴って表面の銅が還元され活性酸素種ラジカルの生成量が減少するため、抗菌能が低下すると結論した。一方、銅-マグネシア/チタニアの場合は、排気処理温度に伴って抗菌活性が向上した。XANES測定によると、600℃の焼成でマグネシア/チタニアはチタン酸マグネシウムの複合酸化物を生成するが、銅を添加すると複合酸化物の生成が抑制されマグネシア/チタニアとは異なる表面構造になることが明らかとなった。従って、銅-マグネシア/チタニアの抗菌活性には、表面構造に伴う銅の電子状態が大きく影響していると考えられる。また、銅-鉄/ジルコニア系試料では、鉄のみを坦持したジルコニアにおいて抗菌活性が観察されなかった。鉄/ジルコニアでは、活性酸素種ラジカルの生成量も少なく、鉄がイオンとして溶け出さないことが原因であると考えた。しかしながら、銅/ジルコニアに鉄を坦持すると抗菌活性が向上することが判った。ESRやICP測定の結果から、鉄添加により銅の酸化数が減少し、活性酸素種ラジカルの生成量、銅イオンの溶出量が無添加の場合よりも増加したためであることが明らかとなった。
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