ランタノイド(Ln)を含むタンタル酸塩を新たに合成し、その電子構造を解析すると同時に、水の全分解反応に対する光触媒活性との相関を検討した。Lnに着目して電子構造を調べたところ、価電子帯はO2pバンドから、伝導帯はTa5d(t2g)バンドから主に構成され、O2pとTa5dは混成していることが分かった。禁制帯内に位置するLn4fバンドのエネルギー準位は、4f電子数の増加に伴って低下し、Ln4f準位は占有バンドと空バンドとに分裂する。この結果、Laを除く系では充填Ln4fバンドとO2p価電子帯、および空のLn4fバンドとTa5d伝導帯との重畳をそれぞれ生じる。バンド構造におけるLn4fバンドの位置と混成の程度を反映して、光学バンドギャップの変化やトラップ準位の形成をもたらし、その結果として光触媒活性が大きく変化することが明らかになった。 層状タンタル酸塩の構造修飾法としてソフト化学的手法によるナノ複合体への構造変換を検討した。ヘキシルアンモニウムイオン交換体を金属酢酸塩の水溶液で処理すると層空間に金属酸化物を挟み込んだ複合体が得られた。酸化ニッケルや酸化銅など一般的に外表面に担持することによって助触媒となる遷移金属酸化物を架橋剤として用いると期待したほどの効果は得られなかった。これは、層間架橋によって層自体の構造が大きく歪んでしまうことによってキャリアの移動を妨げるか、あるいはキャリアを捕捉していることを示唆している。今後、欠陥の少ない層状複合体の合成法についてさらに検討する必要がある。
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