本研究では、ヘテロな会合体として機能を発揮する生体分子の大規模なライブラリーが作製でき、そこから迅速に所望の特性を有する分子をスクリーニングする新規な方法を検討した。すなわち、酵母がmatingによって容易に2倍体を作る性質と、産生タンパク質を分泌することに着目し、たとえば、抗体を例にとれば10^6種類のH鎖とL鎖のライブラリーを別途に調製し、それぞれをa型とα型の酵母に形質転換し、matingさせれば、通常の方法では達成困難な10^<12>種類の抗体ライブラリーが取得できる。さらに、産生抗体は酵母からファージ表面提示よりははるかに大量に分泌されるので、所望の特性のものをアフィニティ吸着やリポソームを用いる迅速均相測定法でスクリーニングすることができる。 1.酵母によるヒト抗体新規発現法の検討 抗エンドトキシンAヒト型抗体遺伝子をモデル抗体遺伝子とし、そのH鎖、L鎖を分泌シグナルを組込んだa型、α型酵母に形質転換して完全な型の抗体として酵母からの分泌を行った。その結果、各組換え酵母はH鎖、L鎖を分泌生産し、これらのmatingによって完全な型の抗体が分泌産生されることが、SDS-PAGEと、抗原を用いたELISAによって確認できた。 2.Mating効率の検討 酵母のmatingにあたえる培地、菌体濃度、菌体濃度比の影響を検討し、効率予測法を明らかにした。 3.分泌ヒト型抗体のリポソームを用いる迅速スクリーニング法の開発 補酵素あるいは酵素マーカーを内包したリポソームを用いて、マイクロタイターウエルまたは膜上で産生抗体(IgM)が検出できるた。その感度は10ng/ml程度であり、所望の結合特性を有する抗体をスクリーニングするのに十分であると考えられる。
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