当初に計画していた青色蛍光タンパクでは、緑色蛍光タンパクと同時に共焦点レーザー蛍光顕微鏡で蛍光を観察することができないため、計画申請後に発売された赤色蛍光タンパクを使用することにした。このタンパクを用いることにより、組み換え前の赤色蛍光と組み換え後の緑色蛍光を同時に観察することができるようになった。 平成12年度の研究計画の最重要課題である、RAGの認識配列に、赤色、緑色蛍光タンパクの遺伝子を挿入した形のレトロウイルスベクターを開発することについては特に問題なく完了した。さらに、本ベクターのコントロールとしてRAGの認識配列のみを取り外したレトロウイルスベクターも作製した。 さらに、これらのベクターをレトヘロウイルスのパッケージング細胞であるPT67細胞にリポフェクション法によって導入し、安定にウイルスを産生する細胞株を2系統樹立した。同時に、コントロールウイルス産生細胞についても同様の方法で作製した。これらの細胞の産生するウイルスを含む培養上清の力価を検定したところ1mlあたり、10000000以上の値があり今後の実験に十分利用可能であることが明らかとなった。 一方、遺伝子を導入される細胞についてもRAG遺伝子を導入した繊維芽細胞を樹立した。この細胞株をポジティブコントロールとしてレトロウイルス感染実験を行ったところ、予想通りRAG陽性細胞にウイルスを感染させた場合においてのみ赤色蛍光タンパクから緑色蛍光タンパクに発現するタンパクがシフトすることが認められた。これらの結果は、本年度作製したウイルスが予想したとおり働くことを示しており、本年度の研究計画が達成されたことを示している。現在は、Bリンパ球および生体組織へのレトロウイルス感染効率の最適化を図っている。
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