研究概要 |
前年度取得したXanthomonas campestris WU-9701由来のα-グルコース転移酵素遺伝子(xgtAと命名)の解析ならびに大腸菌における高発現を検討し、工業的利用可能なα-アルブチンの効率的な生産プロセスを構築した。xgtAを高発現プラスミドpKK223-3のtacプロモーターの下流に連結し、その組換えプラスミドpKKGTFで大腸菌Escherichia coli JM109を形質転換した。得られた形質転換体E. coli JM109/pKKGTFを、0.8mMのIPTGを添加した条件下で22時間培養した場合、その無細胞抽出液のグルコース転移活性は4.8U/mg-proteinとなり、WU-9701株のものと比較して約140倍に向上した。さらに、この無細胞抽出液を用いヒドロキノンの配糖化によるα-アルブチン生産を検討したところ、X. campestris WU-9701の凍結乾燥菌体を用いた場合36時間かかっていた反応時間を3時間にまで短縮することに成功した(供与ヒドロキノン当たりのモル変換収率93%を維持)。さらに、α-アミラーゼファミリーに属する他微生物起源の遺伝子との比較解析ならびにXgtAの一次配列から立体構造予測を行なった。立体構造が類似していると推定されたBacillus cereus由来のoligo-1,6-glucosidaseとの特性比較も行なった。 一方、前年度分離したβ-グルコシド合成活性を有する微生物YS003株は糸状菌と同定され、本菌株を用いてセロビオースを糖基質としたアルブチン合成を行った。YS003株は加水分解活性も強く、供与ヒドロキノン当たりのモル変換収率は0.7%と低かった。 また、数種のマルトースホスホリラーゼ(EC2.4.1.8)にマルトースを糖基質としアルコールの-OH基に対する配糖化活性を初めて見出した。生成配糖体は当初β-グルコシドと考えられたが、酵素による加水分解特性やNMR分析の結果、α-グルコシドであることが明らかになった。当該酵素の反応機構からのα-グルコシド合成を考察した。さらに、本合成反応は、不可逆反応であるため生成したα-グルコシドの分解も起こらず高収率での生産が期待され、鋭意検討中。
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