研究概要 |
金属蒸気を直接分離でき,複雑なmatrixを有する試料を精度よく,化学干渉が無く,しかも超微量元素を高感度で分析することができるSMVE分析法の開発・改良研究を2年間にわたりを行ってきた。これらの成果は4の報文にまとめ,国際雑誌に報告してきた。また1報が投稿中である。学会での口頭発表も5回以上に及んだ。これらの成果を以下に概説する。 ◎SMVE分析法に関する基礎的な開発研究 これまでの研究により、モリブデン管(カラム)中における各種元素の原子化・蒸気化特性は明らかであったが、固形試料を直接入れ(酸などに溶解することなく)分析できる可能性の検討研究は未だ行ってなかった。そこで、以下の研究を行った。またSMVE分析法のための超微量金属元素の予備濃縮法の開発を行った。 ○モリブデン管を用いた原子吸光法による固形試料(銅合金粉末)中の微量鉛の直接定量、○パン酵母を用いた超微量銅の吸着濃縮、○吸着材としてタンタル棒を用いた環境試料中の超微量クロムの濃縮 ○酵母菌へ超微量銀の吸着濃縮・・・これらの研究によりモリブデン管中に直接固形試料を導入して分析できる可能性を明らかにした又、SMVE分析法のための超微量金属元素の予備濃縮法として,タンタル棒および酵母菌が有様であることを明らかにした。 ◎SMVE分析法の改良・応用研究 以前の研究から、金属蒸気分離(SMVE)分析法の利点は 1)高温金属蒸気の物理的・化学的性質の解明、2)金属蒸気の直接分離分析、3)化学的前処理の不要->汚染の抑制,簡便化,低コスト4)光学・化学干渉の低減、5)Tandem instrumentation(MS,ICP,AAS,AES)への応用の可能性、であることが分かってきた。そこで今回は最大の欠点であるカラムの熱変形を避けるために、カラムの電源方式を従来のオーミック加熱法から高周波誘導加熱法に変えた.これにより加熱測定時におけるカラムの変形が少なくなり、原子吸光法による検出が非常に容易になった。改良した本方法を錫の直接分離分析に応用した。従来のオーミック加熱法では信号を得ることができなかった錫の信号を得ることができた。カラム温度1250K・蒸気化温度1250K・キャリーアガス流量1.0mL/minの条件において、錫をカルシウム・カドミウム・鉄・カリウム・マンガン・亜鉛から分離させることができた。
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