今年度は主として、水を移動相とするクロマトグラフィーについて検討した。 まず、超臨界水まで使用することを考慮して、クロマトグラフ系を構築し、その基礎的条件を考察した。超臨界流体の密度や拡散係数を考慮して分離管として内径50μmのキャピラリーカラム(固定相:ポリジメチルシロキサン)とHPLC用の充填カラム(固定相:ODSシリカ)を用い、検出器として水素炎イオン化検出器とUV検出器を用いた。保持の圧力依存による変動を抑制するためのリストリクター内での圧力プロファイルをD'Arcy則に基づいて評価し、FIDに挿入されるリストリクターの位置など実験的な諸因子の効果を評価して最適化を図った。市販のODSシリカは150〜180℃まで、ポリジメチルシロキサンは180〜200℃までの耐熱性を示した。 移動相としての水の逆相系クロマトグラフィーにおける溶媒特性を温度の関数として評価した。温度とともに水の溶媒強度は上昇し、Snyderの極性指数の測定に基づいて評価すると、150℃、250kg/cm^3の水は常温、常圧の水-メタノール混合溶液(体積比50/50)に相当することがわかった。logk'(およびlogα)対1/T(k':保持係数、α:分離係数、T:カラム温度)の二つのVan't HoffプロットはGCやLCと異なって測定の全温度領域で滑らかな曲線となった。保持の選択性の温度依存性の評価の方法を検討した。保持値の表現にはn-アルカンを基準とするKovatzの保持指標を用いた。溶離の容易さとUV検出器の応答性から、n-アルキルベンゼン同族体を用いて保持指標を測定する方法を考案し、タイプの異なる5個の標準化合物の保持指標によりベクトル(保持ベクトル)として保持特性を表現した。
|