研究概要 |
研究計画に従って、ポリエチレンで被覆されたポリプロピレン繊維(PPPE)に電子線を照射して、クロロメチルスチレンのグラフト重合を行い、キレート繊維の前駆体を得た。本研究では電子線照射後の繊維をモノマー溶液へ浸漬する方法すなわち前照射法によるグラフト重合を採用し、グラフト重合条件の最適化のために電子線照射時間、反応溶媒、モノマー濃度などの最適条件探索に関する検討を行った。官能基導入において適切なグラフト率100%前後のグラフト重合体を得る最適条件は、電子線照射量が200kGy(2Mev,1mA)、クロロメチルスチレン(CMS)-ジメチルスホキシド溶液中のCMS濃度が80重量パーセント、反応時間が5-7時間(反応温度40℃)であることがわかった。つづいてクロロメチルスチレンをグラフト重合した繊維(CMS-g-PPPE)とイミノ二酢酸ジエチルエステルとを反応させアルカリ加水分解する経路による官能基導入反応の最適化を行った。その結果、イミノ二酢酸ジエチルエステルとの最適の反応温度と時間がそれぞれ100-120℃で4時間程度であることを明らかにした。また、加水分解は1M NaOH中で9時間還流すると酸容量が5meq/g程度のイミノ二酢酸型繊維が得られることも判った。さらに、得られたイミノ二酢酸型繊維をNa形ならびにH形とし、FTIRを測定した結果、前者ではカルボキシレートイオンに特長的な吸収バンドが1600cm^<-1>付近に観測され、後者では遊離酸形カルボキシル基の吸収帯が1700cm^<-1>付近に双性イオン形カルボキシレートイオンに関する吸収が1600cm^<-1>付近に観測され、イミノ二酢酸型繊維が合成できたことを確認できた。繊維においては官能基導入の反応速度も粒状樹脂の場合に比べてかなり速いことも明らかになるなど、本年度の最重点目標であった合成法の確立を完了できた。現在、金属イオン吸着平衡に関する検討を継続中である。以上、本年は合成条件の最適化に関する検討を行ったので、論文発表は次年度に行う。
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