前年度確立した合成法、すなわちポリエチレン被覆ポリプロピレン繊維にクロロメチルスチレンを電子線前照射法によりグラフト重合した後イミノ二酢酸ジエチルと反応させエステル部位を加水分解して酸容量が4-5meq/gにも達する目的キレート繊維(不織布ならびに短繊維)を合成した。まずバッチ法によりイミノ二酢酸型不織布を用いてPb(II)の吸着速度を検討した。結果の例を示すと、pH4.6の緩衝液からの吸着において、不織布では10分程度で吸着平衡に到達したが、粒状樹脂では平衡到達に200分以上を要した。次にイミノ二酢酸型短繊維を充填したカラムを用いて、Cu(II)とPb(II)の吸着過程における漏出曲線の通液速度依存性を評価した。Cu(II)については、pH2でコンディショニングした条件下では空間速度で600h^<-1>までほとんどCu(II)の漏出曲線の形状に変化がみられなかった。この繊維ではコンディショニング時のpHが高くなるとともに、膨潤度の増大により通液抵抗が大きくなり蠕動ポンプによるカラムへの通液可能な範囲が低下する傾向がみられた。しかし、pH4.6ならびに8の溶液を用いてコンディショニングしたカラムにより、それぞれCu(II)とPb(II)の漏出挙動を検討したところ、検討可能な通液速度の範囲内では漏出曲線の形状が通液速度に全く影響されず、この繊維自体の金属イオン吸着速度が極めて迅速であることが判った。そこで、pH変化に伴う膨潤収縮のより少ないイミノ酢酸系繊維を得る目的で、ポリエチレン被覆ポリプロピレン繊維にメタクリル酸グリシジルをグラフト重合してエチレンジアミンを付加した後、モノクロロ酢酸イオンと反応させた繊維を合成した。この繊維では期待通りpH 11付近でも通液抵抗が少なく、Ca(II)の漏出挙動が空間速度で600h^<-1>まで流速に依存せず超高速イオン吸着が可能であった。以上により、本研究で開発した繊維を用いたカラム法においては、吸着操作所要時間を粒状樹脂充填カラムの場合の1/100程度まで短縮可能となった。
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