研究概要 |
新規Na^+イオノフォアとして有望なカルクス[4]アレン型ビス(12-クラウン-4)誘導体(Distal-Cw_2H_2)の特徴を活かし、その電極寿命を向上させる目的でDistal-Cw_2H_2の残余2つのフェノール性OH基部位へのアルキル基の導入を試みた。長鎖アルキル基の導入は立体障害のために極めて困難であるが、CH_<3->,C_2H_<5->あるいはC_3H_<7->基については相当するアルキルハライドをNaHの存在下、Distal-Cw_2H_2と反応させることで高収率で3種の誘導体Distal-Cw_2Me_2,Distal-Cw_2Et_2,Distal-Cw_2Pr_2に変換できることを見出した。なお、これらの誘導体の構造は、対面する位置にクラウン環を持つコーン型である。次いで、これらイオン感応物質5mg、マトリックス材(PVC)59mg,可塑剤(DOS, NPOE, FNDPE)125mg、添加塩(NaTFPB)1.2mgからなるPVC膜電極を作成し、電位差測定法により湿合溶液法に従い各誘導体、可塑剤の種類によるNa^+イオン選択性を評価した。(1)Distal-Cw_2H_2系の電極では、DOP<NPOE<FNDPEの順にNa^+選択性が向上する。(2)Distal-Cw_2H_2,Distal-Cw_2Me_2,Distal-Cw_2Et_2,Distal-Cw_2Pr_2系の電極の順に、K^+に対するNa^+選択性は低下するものの、その他の妨害イオンに対するイオン選択性が向上する。(3)イオン認識サイトがリジッドな場合、可塑剤の誘電率によってイオン選択性が大きく影響されず、電極膜作成が簡便である等を見出した。この他、上記と同様の評価方法に従い、モノオキシムとジアミンから得られる9種の環式の含窒素Ag^+イオノフォアのイオン識別能を調べたところ、N, N'-ビス(2'-ヒドロキシイミノプロピリデン)-1,3-プロパンジアミンを用いたPVC膜電極は、優れたAg^+選択性(-logK^<pot>_<Ag,K>=3.35)を発揮することを認めた。
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