研究概要 |
芳香族有機塩素化物の一種であるダイオキシンを無害化するには脱塩素化を行えばよい。常温・常圧の穏和な条件で脱塩素化を行うには電解還元が適している。効率よく脱塩素化を行う電極触媒開発の最初のステップとして、芳香族有機塩素化物の中で最も単純な構造のクロロベンゼンを研究対象とした。電解還元の電流密度を上げる目的で、クロロベンゼンの溶解度が高いアセトニトリルを溶媒として選択した。 まずはクロロベンゼン還元活性のある電極金属を探す必要がある。Pt,Ir,Rh,Pd,Au,Ag,Zn,In,Pb,Sn,Cu,Fe,Cdの多結晶を電極として用いた。クロロベンゼン添加によってボルタモグラムの還元電流の立ち上がりがプラス側にシフトする電極金属がクロロベンゼンの還元活性があると期待される。しかし、クロロベンゼンを添加しても還元電流立ち上がりが大きくシフトする金属は見つからず、金属電極はクロロベンゼンの還元に対して不利であることが分かった。そこで、メディエータを利用して還元を行うことにした。 クロロベンゼンを添加することによってボルタモグラムのメディエータ還元電流が増加する系ほどクロロベンゼン還元活性が高いと期待される。メディエータ還元電流が最大となる金属とメディエータの組合わせをボルタモグラムで探した。電極金属は上記の13種類、メディエータはジベンゾフラン、ナフタレン、アントラセン、ペリレンを用いた。メディエータにはナフタレン、電極金属にZnを用いるとメディエータ還元電流が最大となった。 電極金属Zn、メディエータにナフタレンの組み合わせで実際にクロロベンゼンの電解還元を行った。還元生成物としてベンゼンが得られ脱塩素化は成功した。ベンゼンの部分電流密度は過去に炭素電極とジベンゾフランを用いて電解を行った研究例の3倍以上となり、Znとナフタレンの組み合わせで脱塩素化が効率よく進むことが明らかとなった。
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