本研究では、太陽電池の光電変換機能と電池のエネルギー貯蔵機能を併せ持つ、光二次電池の開発を目的としている。既に我々は、電子供与体と電子受容体の二層膜に光を照射すると、電位発生・充電状態を数日間保持できる、全く新しいタイプの光二次電池となりうることを報告しているが、現段階では、発生電位、放電電流や蓄えられるエネルギー密度が低い。この問題の解決のためにこれまで、1)フェロセン置換ピロール誘導体の合成と電解重合、2)色素増感太陽電池との組合わせについて検討してきた。 今年度は、特に2)について色素増感太陽電池の性能向上を中心に検討した。 まず、酸化亜鉛一酸化スズ系半導体を用いることにより太陽光エネルギー変換効率約8%を達成し、これまで知られている酸化チタン系半導体(変換効率:約9%)に限らず、高効率の色素色素増感型太陽電池を構築できることを見いだした。さらに粒子径の異なる酸化亜鉛一酸化スズ系が、色素の光励起状態から生じる電荷分離過程を促進し、電荷の再結合を抑制するという結果に基づき、高効率化をもたらすメカニズムを提案した。 一方、色素増感太陽電池固体化の研究の中で、無機型電子供与体層としてヨウ化銅、チオシアン酸銅等のp-型半導体が、安定で効率の良い正孔輸送層として機能することが知られている。この太陽電池には安定性に欠けるという問題があったが、ヨウ化銅溶液にチオシアン酸塩を微量添加することにより、析出する結晶を微細化することができ、安定性も大幅に向上できることを見いだした。 今後は、本研究によりp-型半導体層(電子供与体層)として有効にはたらくことが見いだされているヨウ化銅を中心に、種々の有機薄膜との比較の観点からまとめを行い、さらに効率向上が期待できるハイブリッド化した系について光二次電池への応用を検討する予定である。
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