研究概要 |
本年度は新規プロトン導電体としてランタノイド水酸化物:Ln(OH)_3を検討することとした。導電率はサイズの小さいErで最も低く、サイズの大きいLa,Prで高い値を示した。その差は4オーダーに及ぶ。これは材料物性が反映していることを示し、バルク伝導である可能性を示唆する。またこの材料は昇温時と降温時のヒステリシスが殆ど存在しない。このヒステリシスは水分子の吸着平衡が達成されないときに現れる。ヒステリシスがないことは伝導機構において水分子の役割が小さいということである。そこで導電率の相対湿度依存性を測定した。測定湿度を下げてゆくと、それに応じて導電率も減少した。例えばPr(OH)_3の場合相対湿度を80から20%まで低下させると約一桁導電率が低下した。これは伝導に水分子が関与していることを示しているが、バルク伝導に必要な水分子であるか、別の伝導パスが存在し水分子を必要とするのか、現時点では明らかではない。しかし低下後も導電率は依然として高い値を維持しているので、他の単純な水和セラミクス粒子とは伝導機構が異なると考えられる。 このように本研究の成果として全く新しいプロトン導電体の候補としてLn(OH)_3を提案することができた。しかしその伝導種や伝導機構については全く不明であり、今後機構解明を目指した研究を行う必要がある。もし実際に導電が確認されれば200〜300℃付近の中温域でのプロトンイオン導電体になると期待できる。
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