研究概要 |
1.クロロアルキルフラーレンカチオンを中間体とするC_<60>誘導体の合成 C_<60>に対するクロロアルカンの求電子付加により得られた付加体(R-C_<60>-Cl ; R=クロロアルキル基)をルイス酸(AlCl_3またはAgBF_4)で処理することにより、C_<60>骨格上の塩素原子をCl^-として引き抜き、種々の誘導体合成に利用可能な中間体であるクロロアルキルフラーレンカチオンRC_<60>^+を発生させることが出来た。たとえば、アニソール溶媒中でR-C_<60>-Clとルイス酸を反応させると、新規付加体R-C_<60>-C_6H_4OMe-pが良好な収率で得られた。ルイス酸としてAgBF_4を用いた場合にはアルコール(R'OH)溶媒中での反応が可能であり、種々のエーテルR-C_<60>-OR'を得ることができた。これらの反応はいずれも1,4-付加体のみを位置選択的に与えるため、合成化学的に有用であると考えられる。 2.クロロアルキルフラーレンカチオンの熱力学的安定性 R-C_<60>-ClからのCl^-の脱離は、ルイス酸を用いないソルボリシス条件でも起こり、アニソール中およびトリフルオロエタノール中で溶媒置換体(R-C_<60>-C_6H_4OMe-pおよびR-C_<60>-OCH_2CF_3)を与えた。このソルボリシス速度は、同一条件で測定したt-BuClの速度とほぼ同等であり、R-C_<60>^+がt-ブチルカチオンに匹敵する安定性を持つことが示された。一方、カルボカチオンの熱力学的安定性のパラメータであるpK_<R+>値を、H_2sSO_4-TsOH中におけるフラレノールR-C_<60>-OHのイオン化率の測定により決定した。得られた値(〜-15)はt-ブチルカチオンのpK_<R+>値に近いことから、RC_<60>^+がアルキルカチオンに匹敵する安定性を持つことが確認された。
|