研究概要 |
ラジカルイオンの近赤外領域における蛍光から溶液中のラジカルイオンの励起状態ダイナミクスについて明らかにすることを目的とし、1,3,5-位あるいはすべてに位置にメトキシ、ヒドロキシなどの酸素置換基をもつD_<3h>あるいはD_<6h>対称性のベンゼン誘導体のラジカルカチオンについてその蛍光性に及ぼす因子を検討した。これらのラジカルカチオンでは、蛍光量子収率は、酸素上の置換基としてアルキル基、アセチル基を導入することにより無輻射失活や電子移動消光により蛍光性が低下することを見出した。また、1-位にアミノ基、ジメチルアミノ基をもつ3,5-ジメトキシベンゼンのラジカルカチオンについても蛍光が観測されることを見出し、電子構造がD_<3h>あるいはD_<6h>対称性に近いことが蛍光性に重要であることが示唆された。また、1,3,5-トリメトキシベンゼンラジカルカチオンの吸収、蛍光スペクトルにおけるStokes Shiftの溶媒効果や1-メチル-2,4,6-トリメトキシベンゼン、1,3,5-トリメトキシベンゼン、ヘキサメトキシベンゼンの1,2-ジクロロエタン中におけるラジカルカチオンの吸収、発光スペクトルから基底状態ラジカルカチオンのJahn-Teller効果による分子変形の蛍光性への関与を見出した。 1,3,5-トリメトキシベンゼンラジカルカチオンの蛍光をプローブとして電子移動反応や放射線化学反応におけるラジカルイオン対の解離・形成のダイナミクスを観測することに成功した。 近赤外領域の観測システムとして吸収システムを構築し、さらにフェムト秒レーザーを用いたアップコンバージョン法により励起状態の寿命と時間分解蛍光スペクトルを観測する方法を現在開発している。また、励起状態ラジカルイオンのダイナミクスの観測についてナノ秒レーザー/フェムト秒レーザー逐次励起法による過渡吸収測定によって測定するシステムを現在開発している。
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