本研究は自己組織化単分子膜の手法を用いて金電極表面にポルフィリン誘導体を修飾し、これを表面プラズモン励起して得られる蛍光および光電気化学特性から励起機構と効率を評価し、表面プラズモンの電場と分子の相互作用を定量的に解明することを目的として研究を展開した。 1.近赤外領域における電場増強効果の検証 表面プラズモンの電場は可視〜近赤外領域において入射光の電場が数十〜数百倍に増強されるため、表面修飾分子を高効率で励起することが可能である。これまでは可視領域における電場増強を研究してきたが、本研究ではより大きな増強効果が得られる近赤外領域を中心に扱い、ポルフィリン修飾金電極の表面プラズモン励起により発生する光電流のアクションスペクトルを精密測定した。その結果、ポルフィリンの最低励起順位である655nmのQx(00)バンドよりも長波長の670〜800nmにおいて構造をもつ吸収帯が確認された。この領域には通常の透過吸収分光で観測できるような吸収帯は存在しないが、表面における会合によってごく弱い吸収帯が現れる可能性がある。これらが数百倍に達する電場増強を受けて励起されたものと解釈された。 2.金表面の微細加工による電場増強 これまでの研究では平滑な金表面を用いて蛍光や光電流の増強効果を検証してきた。一方、金表面に凹凸を持たせるとプリズムを用いる全反射照明なしでも表面プラズモンを励起可能なことが知られている。そこで、金表面に二次元グレーティングやマイクロドットを形成したうえで表面にポルフィリンを修飾して蛍光特性を観測することにより、その効果を検証した。二次元グレーティングの場合にはプリズムなしで表面を直接光照射した場合にも長波長部で蛍光増強が観測された。マイクロドットの場合にはドットの周縁部分の蛍光強度が中心部より強く、エッジによる増強を観測することができた。
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