研究概要 |
金属リチウム負極の充放電可逆性を向上させるために,金属リチウムを物理的・化学的に制御し,界面構造の最適化を検討した。本年度は以下の2課題について研究を進めた。 1.温度制御による金属リチウム界面の物理的構築 LiPF_6/PC-DMC電解液,Li(C_2F_5SO_2)_2N/PC-DMC電解液の温度負荷の違いによる充放電サイクル寿命の変化について検討した。その結果,LiPF_6を電解質として用いた系では,25℃での短いサイクル寿命が,いったん-20℃で10回サイクルする(「低温処理」)とその後は25℃に昇温しても寿命が向上することがわかった。一方,Li(C_2F_5SO_2)_2Nを用いた場合,低温処理はサイクル寿命の低下をもたらした。電解質による低温処理効果の違いを,混合電解質塩を用いた系についても調査した。さらに交流インピーダンス測定,in-situ CCD顕微鏡観察,XPSによる表面分析により,リチウム表面皮膜組成を検討した結果,イミド単独およびイミド塩リッチな電解液では,低温処理により生成した表面膜が非常に薄いため,昇温による温度負荷で破壊が生じ,リチウムデンドライトの成長が促進されたため,その後のサイクル寿命が低下したと考えられる。LiPF_6塩単独あるいはLiPF_6リッチな系では,表面膜が比校的厚いことから,温度負荷の後でもほぼ安定な状態で維持され,サイクル寿命の向上につながったと推定された。 2.金属ヨウ化物添加剤による金属リチウム界面構造の化学的構築 Li(C_2F_5SO_2)_2N/EC-DMC電解液とLi(C_2F_5SO_2)_2N/PC-DMC電解液に,添加剤としてAlI_3あるいはMgI_2を用いたときの充放電サイクルを,金属塩の添加方法を変えることにより検討した。その結果,MgI_2を用いたときはサイクル中常時添加した場合に最も高い効率が得られたが,AlI_3を用いたときには初回充電時のみ添加した場合に効率が最も高くなった。これらの効果の違いについて,交流インピーダンス測定,in-situ CCD顕微鏡観察により考察し,析出/溶解機構を提案した。また,金属塩の添加濃度には最適値があることがわかった。
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