本研究では、電界効果トランジスター(FET)と酸素酸塩を組み合わせた新規なNO_2センサの設計と開発を行った。まず、FETのゲート部に亜硝酸ナトリウム補助相を接合した基本素子について、180℃でNO_2検知特性を調べたところ、亜硝酸ナトリウムとNO_2の平衡反応に基づきゲート・ソース間電圧(VGS)が変化し、これがネルンスト式に従うことを確認した。そこで、ソース・ドレイン間電流を一定値に保つようにVGSを制御し、NO_2濃度を変化させて、VGSの変化からNO_2の検出下限値を求めたところ、500ppbであることがわかった。次に、検出下限濃度を向上させるために、亜硝酸ナトリウム補助相に種々の酸化物を添加したところ、酸化タングステンを添加したセンサが130℃で10ppbの検出下限値を有することが明らかとなった。さらに、このセンサ素子について妨害ガスの影響を調べたところ、CO_2にはまったく影響を受けず、NOには10倍の感度があることがわかった。つまり、NO_2の測定対象濃度がNOの1/10以上あればNOにはまったく影響を受けずに測定できる。次に水蒸気の影響を調べたところ、電極とリード線の接合に用いた金ペーストが水蒸気の影響を受けることがわかり、熱処理を施すことで回避できることがわかった。以上の結果から、本センサ素子は、日本のNO_2規制値が40〜60ppbであることを考慮すると、大気環境中のNO_2を検知できる超小型のセンサとして有望であることが示唆された。
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