ブチルトリクロロスタンナンをモノマーとして電解合成を行い、ネットワーク構造を持つポリブチルスタンナンの合成に成功した。 空気中において安定な高分子とするために、末端のアルキル化や水素化を繰り返し試みたが、全て失敗に終わった。そこで、末端をスズー塩素結合のままに、ネットワークポリスタンナンの評価を行うこととした。 まず、最初に最も基本的な性質である水に対する安定性について評価した。従来報告されてきた直鎖のポリスタンナンは、水と速やかに反応して分解することが知られている。ここで得られたネットワークポリスタンナンは、水に対してかなりの耐性を示した。これは、水がスズースズ結合と反応する前に、末端のスズー塩素結合と反応するためであると理解された。通常よりもやや多量の水と反応させることにより、ネットワークポリスタンナンの分解が確認された。 さらに、紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。ネットワーク構造特有の、可視域へとすそを引く吸収および可視域におけるブロードな蛍光が認められた。また、それらの温度依存性においても、今回得られたネットワークポリスタンナンは、末端がアルキル化されたネットワークポリシランやネットワークポリゲルマンにおいて得られるシグマ共役系高分子特有のスペクトル特性を示すことがわかった。 オクチル基、フェニル基、メチル基を持つネットワークポリスタンナンについても実験を進行中である。
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