(1)サーモリシンカラムの調製およびホトメトリーに基づく触媒活性の計測 (1)水に極めて溶解しにくいサーモリシン(熱安定性に優れた中性プロテアーゼ)を40%グリセリン含有ホウ酸塩緩衝液に溶解させ、多孔性ガラスビーズ上に共有結合法で固定化を試み、約30%の収率で酵素固定化物を取得することができた。この酵素粒子をミニカラム(0.5ml)に充填し、フローインジェクション分析システムに組み込んだ。 (2)カロリメトリーによる活性計測に先立ち、高分子量の基質であるミルクカゼインに替えて、比較的低分子量の合成オリゴペプチドを用い、直接吸光光度法による酵素触媒反応のモニタリングを行った。2.5mMの透明な基質液を調製することができ、通液に伴う吸光度の明確な減少を確認し、高精度・高感度で加水分解反応を検知できることを実証した。 (2)サーモリシン固定化カラムを用いた亜鉛(II)イオンの超微量計測 (1)計測システムにアポ酵素取得用のキレート剤液(100mM EDTA溶液、pH4.0)並びに基質液を順次、通液すると、基質液の吸光度の減少が認められなくなり、酵素活性の低下が示された。この傾向はキレート剤液の導入量の増大に対応して顕著となり、2.5ml以上では通液量を増やしても、酵素活性の低下はほとんど変わらず、アポ酵素に変換されたものと見なした。また、一度活性の低下したカラムに5mMの亜鉛(II)イオン液を注入すると、元の活性に可逆的に復帰する現象が示された。 (2)そこでアポ酵素に変換された酵素力ラムに対し、各種濃度の標準亜鉛イオン液を添加し、活性の回復度を調べ、1.0nM〜5.0mMの範囲で計測できることが認められた。これは過去に得られた結果よりも、1万倍も高感度な計測を実現できたことを意味するものである。 (3)今後の展開 ホトメトリーによる触媒活性の計測に引き続き、カロリメトリックモニタリングを展開する予定で、既に触媒活性を温度変化という応答の形(mKの桁)で高精度計測に成功している。
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