本研究は、異なる組成及び構造を有するチタニアゲルについて、擬似体液中におけるアパタイト形成能を追究し、チタニアゲルの生体活性の組成及び構造依存性を明らかにし、優れた機械的物性と高い生体活性を備えた人工骨用チタン及びその合金の調製原理を与えることを目的とするTiO_2、Na_2O-TiO_2及びCaO-TiO_2系において、ゾールーゲル法によりチタニアゲルを調製し、さらにこれらを種々の温度で加熱処理することにより、種々の組成及び構造を有するチタニアゲルを作製した。これらのゲルをヒトの体液にほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液に種々の期間浸漬した。擬似体液浸漬によるゲル表面の組成及び構造の変化を走査型電子顕微鏡観察、エネルギー分散型X線分光分析及び薄膜X線回折により調べ、ゲル浸漬による擬似体液の濃度変化を高周波誘導結合プラズマ発光分光法により調べた。 TiO_2系において500℃で加熱処理したゲルはアモルファス構造を、600℃で加熱処理したゲルはアナターズ構造を、700℃で加熱処理したゲルはアナターズ及びルチル構造を有することが分かった。Na_2O-TiO_2及びCaO-TiO_2系においては、500℃で加熱処理したゲルはいずれもアモルファス構造を有するが、600及び700℃で加熱処理したゲルは、Na_2O又はCaOの含有量を増大するにつれ、アナターズに代わってチタン酸ナトリウム又はチタン酸カルシウムの結晶構造を有するようになることが分かった。これらのゲルはアナタース構造を有する場合に、擬似体液中でアパタイトを形成すること、及びゲル中のアナタースの量が高いほど、高いアパタイト形成能を示すことが分かった。以上の結果、チタニアの構造の中、アナターズ構造がアパタイトの形成に有効であることが明らかになった。
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