Sc_2(WO_4)_3型構造を有し、イオン半径の大きく異なる3価イオンを含む固溶体は、多結晶の形態では得られないことから、このような結晶中のイオン伝導特性を評価することは不可能であった。そこで異なる二種類の方法により、イオン半径の大きく異なる3価イオンとしてAl^<3+>とLu^<3+>を含むAl_2(WO_4)_3-Lu_2(WO_4)_3固溶体を単結晶の形態で得ることにより、そのイオン伝導特性を調べた。 まず、従来行ってきたAl_2(WO_4)_3-Sc_2(WO_4)_3固溶体単結晶の育成と同様に、チョクラルスキー法により育成した。原料粉末を混合、溶融させた後、引き上げ法により育成した単結晶は無色で良質な単結晶であった。XRD測定から得られた単結晶はSc_2(WO_4)_3型構造であり、単結晶断面をEPMAにより元素分析した結果、結晶中には均一にAl、Luが分布していたことから、目的のAl_2(WO_4)_3-Lu_2(WO_4)_3単結晶の育成に成功した。 一方、Al_2(WO_4)_3単結晶にLu_2(WO_4)_3多結晶を接触させ、直流通電により強制的にLu^<3+>をAl_2(WO_4)_3単結晶に注入した結果、この場合も上述の直接合成の場合と同様、Al_2(WO_4)_3単結晶中に均一にLu^<3+>が存在することが明らかとなった。同様にAl_2(WO_4)_3-Eu_2(WO_4)_3固溶体単結晶の育成にも成功した。これらの固溶体単結晶の導電率を測定したところ、母体のAl_2(WO_4)_3より導電率が増大し、Al_2(WO_4)_3-Sc_2(WO_4)_3と同様、格子が拡大することによりイオン導電率の向上が認められた。 以上のことから、多結晶体では合成することができないSc_2(WO_4)_3型構造を有し、イオン半径の大きく異なる3価イオンを含む固溶体を単結晶の形態で合成し、そのイオン伝導特性への格子サイズの影響を明らかにすることに成功した。
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