研究概要 |
SrCeO_3に希土類イオンをドープしたものは、顕著なプロトン伝導性が知られており、他の金属酸化物と比較して高い水素溶解度を有し、アルカリ溶液に対しても優れた耐食性を示す。これまでに最も代表的なプロトン伝導体であるSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-α>にアルカリ電解液から電気化学的に水素を吸蔵放出させることが可能であることを示してきた。このことは、この物質が二次電池の負極材料となりうることを示唆している。本研究では、Ybの代わりに電子伝導性の発現が期待される希土類イオンをドープしたSrCe_<0.95>Pr_<0.05>O_<3-α>、SrCe_<0.95>Tm_<0.05>O_<3-α>および、SrCe_<0.95>Tb_<0.05>O_<3-α>について検討した。 SrCe_<0.95>Pr_<0.05>O_<3-α>は、SrCO_3、CeO_2およびPr_6O_<11>を化学量論比で混合、成形し一次焼成1400,10hした後、再粉砕、成形、二次焼成1530,10hを経て合成した。同様にしてSrCe_<0.95>Tm_<0.05>O_<3-α>、SrCe_<0.95>Tb_<0.05>O_<3-α>も得た。これらの粉末と導電剤のニッケル金属粉末を40時間ボールミル処理し、結着剤としてポリビニルアルコールPVAを加え、発泡ニッケル板上に充填プレスしたものを試験電極とした。酸化物NiPVAの混合比は60355とした。対極にNi(OH)_2/NiOOH電極、参照極にHg/HgO電極、電解液にKOH水溶液6Mを用いて電池を組立て、充放電測定を行った。充放電電流密度は18.5mAg^<-1>とし、放電時のカットオフ電位は-0.3Vとした。 各電極の放電容量のサイクル依存性をしらべたところ、SrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-α>以外のプロトン伝導体も、放電容量はYbのものに比べて劣るものの、常温においてアルカリ溶液から電気化学的に水素を吸蔵-放出できることがわかった。ただし、充放電サイクルを繰り返すことにより、すべての電極において放電容量が減少していくことが示された。各電極の1サイクル目の放電容量、水素溶解度および800で調べられている電子伝導率を比較して調べたところ、電子伝導率が高いSrCe_<0.95>Tm_<0.05>O_<3-α>とSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-α>では放電容量が高く、電子伝導率が低いSrCe_<0.95>Tb_<0.05>O_<3-α>では放電容量が低いという傾向が示された。
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