研究概要 |
初年度の研究で,高温型酸化物プロトン伝導体SrCe_<0.95>M_<0.05>O_<3-δ>(M=Yb, Pr, Tb)は電気化学的に水素の吸蔵と放出が行える可能性のあることを見い出した.本年度は,当該酸化物の電池負極特性、および水素吸蔵合金とプロトン伝導体を複合化させた材料の電極特性について検討した. 試験に用いた複合材料は、水素吸蔵合金と酸化物プロトン伝導体を遊星型ボールミル装置を用いてメカニカルミリング処理を施すことにより調製した.これを更に導電剤、結着剤,少量の6M KOH水溶液と共に混ぜ,発泡ニッケル(1cm×1cm)に塗布し試験極とした.また比較のため,プロトン伝導体を発泡ニッケル上に塗布した電極も作製した.電池充放電測定は三極式セルを用いて行い,対極には水酸化ニッケル,電解液は6M KOHとした. まず高温酸化物プロトン伝導体のみを用いて作製した電極に対し,充放電を繰り返した.この結果,SrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>では、水素放出量は実用化されている合金材料にはおよばないものの,酸化物1式量あたり1.11H(108mA hg^<-1>)となり.酸化物プロトン伝導体は室温付近で可逆的に水素の吸蔵と放出のできることが明らかとなった.次に複合化試料について検討したところ、かなり早いサイクル数から,放電容量が合金電極のみの場合よりも大きくなっており,その中でもプロトン伝導体を5wt%加えた複合体電極ではその差が顕著であることが分かった.このことから,プロトン伝導体との複合化が合金電極の初期活性化特性の向上に寄与することが示された.更に,導電材を含まない粉末試料のだけの特性を評価できる水素化の方法として、還元剤水溶液を用いて検討した。その結果、複合材料では確かに水素固溶相の形成が合金試料に比べ早いことが分かった。これらのことから,高温型プロトン伝導酸化物は水素の吸蔵/放出の機能を有すること,またこの酸化物と水素吸蔵合金を複合化した材料は、初期活性化特性に優れた負極材料になりうることが明らかになった.
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