研究概要 |
家庭で調理用に使われている電子レンジを用いて,緻密な部分安定化ジルコニア焼結体(PSZ)の作成法を開発した.これは家庭用電子レンジで自己発熱を起こすZnO-MnO_2-Al_2O_3からなるセラミックスペレットをプレヒーターとして用い,これに挟まれたPSZペレットを加熱しマイクロ波吸収自己発熱,緻密化に導くものである.本年度の研究において以下を明らかにした. (1)PSZが高温でマイクロ波を吸収し自己発熱を起こすことを直接的に実証した.これは赤熱したPSZを電子レンジに入れさらに10分運転しても赤熱が続くことから確認された. (2)PSZで95%以上の相対密度を持つ焼結体を得ることができた.比較的大型の試料作成を行い,4点曲げ強度の測定を行ったところ,800MPaの破壊強度を得た.電気炉焼結で得られるほど(1100MPa)には至らなかったものの,作業の経済性から考えれば有効な焼結法であると判断できる. (3)有効な焼結を行うには少なくとも直径20mm以上の成形体である必要がある.これはマイクロ波吸収による発熱量が体積に比例し,熱放射とのバランスから,これ以上の大きさを必要とするものと考えられる. (4)電子レンジを15分間運転して得られた密度は電気炉では1350℃4時間あるいは1450℃15分間加熱して得られる密度に匹敵した. (5)マイクロ波加熱により得られた焼結試料の粒径は電気炉を用いて同温度で同時間加熱したそれに比較して明らかに成長していた.このことから,マイクロ波による過熱化緻密化のみでなく粒成長すなわち拡散を加速していることが示唆された.
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