研究概要 |
本年度は主に,光触媒活性を有する酸化チタン微粒子を,電気化学プロセスによって析出させた金属または酸化物のバインダ相によって固定化する際の挙動を検討した.この様なプロセスにおいては,凝集しやすい微粒子を如何に分散性よく均一かつ高密度に固定化するかが重要である.バインダ相をパラジウムまたは銅とした系において,微粒子の分散性を高めるためのプロセスの改善を試みた.その結果,バインダ相を電解析出させる際に電解浴に超音波分散をかけつづけることと,微粒子として分散性の高い球形のものを数%添加することが有効であることを見いだした.具体的には,生成する複合膜中の酸化チタンの含有量が増加していることと,膜を改めて超音波洗浄した際の微粒子の脱離が低減していることが,蛍光X線分析により確認された.また,原子間力顕微鏡によって膜表面が平滑になる様子が観察され,走査型電子顕微鏡によって表面の微粒子の分布が均一化していることも観察された.さらに,これらの膜質の改善にともなって膜の光触媒活性も明らかに向上し,本プロセスが実用的にも応用できる可能性が示唆された.加えて,分散性の良い微粒子を少量添加することで全体の微粒子の分散性が向上するという知見は,多くの微粒子分散プロセスに広く応用できるものと期待される. 一方,電気化学的に析出させたシリカまたはアルミナで酸化チタン微粒子を固定化する実験も行った.様々な電解条件を検討した結果,バインダ相の析出と微粒子の固定化は可能となったが,得られた膜の光触媒活性は非常に低いものであった.この理由は酸化チタン微粒子の表面をバインダ相が覆ってしまったためと考えられ,析出プロセスを改善してこの問題を解決することが今後の課題である.
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